学部長メッセージ

先の見えない時代だからこそ、生き方のぶれない軸を

神学部長 川中 仁

 

■ 神学という学問は、人間の生き方と密接に関わっています。「神学論争」という言葉がありますが、神学するということは、決して机上の空理空論をもてあそぶことではありません。神学においては、学問することと生きることは一つになっていて、神学する者は、どのように生きるのかということが常に問われています。
■ 私の専門的な研究テーマの一つは、イグナチオ・デ・ロヨラの霊性です。イグナチオの生きた16世紀のヨーロッパは、中世から近世への移行期で、ルネッサンスと宗教改革でキリスト教世界の既存の秩序が根幹から揺らいだ時代でした。同時に、大航海時代の幕が開け、ヨーロッパが世界へと大きく開かれる時代でもありました。
■ それはまさに混沌とした激動の時代で、同時代の誰も、世界情勢の全体像を把握することも、その行く末を見通すこともできませんでした。そんな時代のただ中で、イグナチオは、何よりも人を大事にするという聖書的な価値観にもとづき、より良い世界の構築に全力を尽くしました。
■ このイグナチオの理想は、時代の隔たりを超えて、21世紀においても変わることのない神学の根本課題です。

 

(学部長紹介) 川中 仁 Hitoshi Kawanaka, S.J.
神学部神学科教授。イエズス会司祭。現代世界においてキリスト教信仰をいかに弁明するのかを課題とする基礎神学を専門としている。また、イグナチオ・デ・ロヨラの霊操を中心としてイエズス会の霊性の学問的研究に取り組んでいる。神学部では、キリスト論や教会論などの教義学とともに、新約聖書概説や新約聖書神学などの新約聖書学の基礎科目を担当している